青空文庫 Revisedについて

青空文庫という活動があります。

日本の著作権法では、2016年現在、概ね、著作者の死後50年が経過すると、著作権の保護期間が終了します。

青空文庫では、この著作権の保護期間が終了したテキスト著作物と、著作権者が一定の範囲で公開を許諾したテキスト著作物を公開しています。

活動としては、主にボランティアが主体となって、コンピュータへの入力、校正、作品の公開等を行なっています。

「青空文庫 Revised」は、この青空文庫の活動の成果を、何かもっと別の方法でより活用しよう、という意図から立ち上げました。

Revisedというのは、少し。いや、かなり言い過ぎかもしれません。

また青空文庫の本家とは、まったく関係ありません。

私個人は、テキスト著作物の配信や利用者への接触。「読書環境」。そういったものに興味を持っていました。

しかし、そうしたことの「実験」をする為には、当然ながら許諾を得た公開すべき著作物が必要となります。しかも、それらの著作物がひとつやふたつでは、なかなか「実験」の効果を感じることができません。

「青空文庫 Revised」では、すでに先達が苦労して構築してくれたこれらの著作物データを利用し、「実験」がやっていければいいな、と思っています。

また、この「実験」に意義が少しでも感じられるのであれば、結果として青空文庫の活動に寄与できれば、とも考えています。

青空文庫は、様々な危機に瀕しているように見えます。

例えば、環太平洋戦略的経済連携協定との兼ね合いで著作権保護期間が70年に延長される、という報道があります。現在毎年新規に新しく保護期間が終了した著作権者の作品が公開されています。もし、現実に保護期間が70年に延長された場合、新しい著作者の作品の公開は単純に言って20年延長されるのでしょう。

青空文庫は基本ボランティアの熱意で運用されています。20年間、新規に新しい作家の作品が公開されないというのは、活動支援者にとって相当なマイナス影響となるでしょう。

著作権者の権利は、本質的に守られるべきものです。ただ、どんな著作物も、様々な文化的背景、より以前からある著作物達。そういったものから影響を受けずに存在することはありえません。私個人としては、単純に保護期間が一律延長されるという方針には反対します。

しかし、ただ、延長反対、と言っても、多くの人の心には届かないでしょう。

著作権が切れることで、社会に対してどういう「メリット」が存在するのか。それが多くの人に響くものであれば、また保護期間についてどの位がバランス的に妥当なのか。そうした考えも変ってくるかもしれません。

「青空文庫 Revised」もそうですが、権利がオープンになることで、より出来ることは増えます。例えば、あなたがとても読みやすいビュワ(テキスト著作物を読む為のアプリ)を実現する為のアイデアを持っていたとします。しかし、今の環境では、そのアイデアを好きな作品で、より多くの人に使ってもらうことは極めて困難です。

青空文庫ビュワというアプリ群が存在します。青空文庫の作品を読む為に特化したアプリです。多くのアプリがあり、自分が好きなインターフェイスをもったアプリを選択することが可能でしょう。

しかし、青空文庫以外の作品を読むことには制限があります。

あなたが、アマゾン社のKindleという電子書籍サービスを使っているとしましょう。Kindleのサービスで買ったあの本を、あの青空文庫ビュワのインターフェイスで読めたらなぁ… そんなこともあるかもしれません。

しかし、現実的には極めて困難でしょう。アマゾン社に、実装してもらわねばなりません。そして人の好みは多様で相反します。

インターネット、いやHTTPやHTMLのようなWebブラウジングの環境だけをとっても、規格が公開され、様々な試行錯誤が行なわれ、結果として非常に早い進化が今も進んでいます。

テキスト著作物を取り巻く環境では、まだまだこの辺はクローズドな部分が多く、進化は遅々としているように思えます。

何か、そういう環境を打破できる実験が出来るといいのだけど。というような感じで少しずつやっていければいいかなといった所です。

こうした、何の権利も権限もない人が、実験を行なうことができる。その事自体が、ありがたいことですね。

青空文庫の発起人、および青空文庫を支える青空文庫工作員の方々に、感謝いたします。

青空文庫Revisedでは様々な公開されたサービスやソフトウェアを利用しています。どちらかというとそれらを組み合せただけといってもいいです。これらのサービス、ソフトウェアを公開していただいているすべての方に感謝いたします。

私事ですが、先日、父が他界しました。

正直、お金にならないようなことをやってる時も多い私を、嫌々ながら?も実質支えてくれたのは、多分親です。青空文庫Revisedの原型にあたる青空文庫OPDSはブログを見ると既に2011年2月には開始していたようです。それからかなり実質放置されていました。不具合にも気がついていましたが、なかなか手を付けられず。

今回、少しまとまった時間があったので、色々と修正していました。

父の介護の為、最期は全部の仕事を辞めていたので、結果的に空いた時間が出来たからです。

こうした道を歩む私を心よくは思っていないだろうな、とは常々感じているのです。しかし、結果的には多分親は私の活動を支援してくれたことになるのでしょう。

他界してしまった為、直接、言葉で感謝することはできませんが、バカなことばっかりやってるけど「ありがとう」。